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24:再会 |
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復讐なんて。 柄じゃないと思っていた。
助けを求める、あの瞳が忘れられない。 本当に、助けられなかったのだろうか。 自分は、手を伸ばすことを躊躇したりはしなかったか? 殺されることを、怖いと思わなかったか?
だとしたら。
それは裏切り行為になってしまう。
「……くそ。」
伸びきった雑草を腹立ち紛れに蹴飛ばして、黒川は顔をしかめた。
「…くそッ。」
胸が苦しい。 助けられなかった自分への怒りなのか、友人を殺された復讐の念なのか―――はたまた、躊躇した自分への嘲りなのか。 そしてこの化け物を消すには、生み出した原因を消去するしかないことも分かっていた。
李潤慶。
自分を侮って、生かした。 畑の仇を討ちたいなんて、カッコ良いことを言いたい訳じゃない。
―――自分が、他人に対して殺意を抱く日がくるなんて。
ふと、可笑しくなって、黒川は諦めたように口元に微かに笑みを乗せた。
ちょっと前までは、双眼鏡ひとつでどうやって人を殺せるんだ、と思っていた。 けれど今は。 拾い物は、きっと黒川の力になってくれる。 東屋の裏で手に入れた。 ―――細長い、大きめの銃。
「何だか、ご機嫌だネ?」
噂をすれば、というやつだろうか。 低いが通る声に乗せた、少し違和感を覚える日本語は、聞き間違えようがなかった。
「……随分早い再会になっちまったな。」
ゆったりと瞳を眇めて。 黒川は目の前に出てきた相手を見つめる。
李潤慶。
許せない。 そんな殺意までを黒川に抱かせる相手。
彼は無防備に、手に斧を携えただけで、黒川の目の前に現れたのだった。
「ボクのこと、追って来たんでショ?ずーっとレーダーに映っていた赤い点は、君だったようだネ。」 ちゃり、と首に掛けた鎖を上げると、李のYシャツから角張った小型の機械が出てきた。 「首輪に反応するようになっているんだってサ。番号までは出ないけど―――この辺、ちょっと不満カナ。」 にこっと笑って、李はまた胸元にレーダーを仕舞い込む。 それはそれで。 癪に障る。
「…軽率なんじゃねぇのか。」 眉間に皺を深く刻んだまま、黒川は唸る。 「?軽率?そんなことないヨ。ボクはいつだって慎重派だからネ。」 相変わらず笑みは絶やさず。
「どうでもいいけど。……死んで欲しいんだよな。あんたには。」
ガチリ。
先程森で拾った銃を、李に躊躇いなく突きつける。 銃を目の前に出され、初め、李はちょっとだけ目を瞠った。 しかし、すぐに元の笑顔のポーカーフェイスに戻る。
覚悟を決めたのか。 そんなもので殺されない、と言う自信があるのか。
分かりかねたが、それもどちらでもいいこと。
もう、何の躊躇いもなかった。
銃弾は近くの木の幹に被弾する。 そのときの彼の顔は、酷く強張っていて、泣きそうにも笑いそうにも見えたという。
撃ってくる黒川に構わず、李は彼に向かう。
李の左肩が、赤く染まる。
銃弾は貫通したらしい。
「ほら。」 「やっぱり君はボクに勝てないネ。」
愉快そうに笑う李は、走り込んだその勢いで、黒川を押し倒していた。 空の銃を念の為遠くに蹴り出す。
「銃を持っているから勝てると思っタ?銃を持っていないから死ぬと思っタ?」
くすくすと笑いながら、それでも黒川を地面に押さえる腕は力強い。
「素人考えだネ。やーっぱり幸せボケしてるヨ。君たち日本人は。」
最後の下りで、李の瞳に剣呑な光が宿る。
「だから友人を助けよう、とか、皆で生き残ろう、とか考えるんだネ。それはとてもとても綺麗なことだけど―――」
ぐっと黒川の喉を圧迫する李の力が強くなって。
「愚かだヨ。」
極上の笑みと共にもたらされたのは、骨を砕く、耳障りな音。
思い切り体重を乗せて、李は黒川の喉を潰した。
首の骨が折れた黒川は、もう動かない。
そう言えば。 彼は銃を持っていたっけ。
銃弾は全部切れたようだったけれど。
―――ハッタリには使えるかもしれない。
離れた場所に転がっている大振りの銃をひょい、と軽やかな仕草で持ち上げて。 李は、また何事もなかったかのように、颯爽とその場を去るのだった。
出席番号9番 黒川柾輝 死亡 《残り ― 13人》
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