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21:謀 |
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森の奥の一軒家。 一心不乱にパソコンのキーボードを叩いていた椎名は、何かの気配を感じてその手を止めた。
「……?」
そのままゆっくりと背後を振り返る。 (誰かに呼ばれたような気がしたんだけど。) 風の音だったのかな、と一人ごちて、さして気にも留めず、椎名はまたパソコンの画面に向き直るのだった。
椎名がこの村外れの民家に辿り着いたのは、1日目の夜あたり。 中には必要なソフトがほとんど揃っていた。
しかし、前住人の事はどうでも良い。 「それにしても、これが役に立つときがくるなんてなー…。」 パソコンの横に置かれた透明なケースを一瞥して、椎名は呟く。 (分かっていたんだろうな…玲は。あの時、自分がこれから何をされるか、俺達が何に巻き込まれるか。) そう思うと切なくてたまらない。
今はただ。 最愛の恩師が残した、この破壊プログラムを政府のコンピュータにぶつけてやることだけ考えていたい。 他には何もいらなかった。
―――友人を悼む、その刹那さえも。
『お昼になりました。6回目の放送を始めます。』
太陽が真上に上がった12時。
『まずは禁止エリアの発表と…ちょっと変更点がありますので、心して聞いていてください。今までに殺された子は15人。2人は私が殺しちゃったから、実質13人ってことになるかしら?』
ふぅ、とわざとらしくため息をついて、西園寺は続ける。
『もうプログラムも中盤に差し掛かるって言うのに、このペースはちょっといただけないわね。もしかしたら、島が広すぎて皆会えないのかしら?会えなかったら殺しあうどころじゃないですものね。そこで、』
一呼吸。
『禁止エリアを増やします。今まで2時間にひとつだったものを1時間にひとつに。これだったら遭遇率もぐっと上がると思うのよね。と言う訳で禁止エリアの発表です―――……。』
ハキハキとした聞き取りやすい声で、西園寺は6つの禁止エリアを読み上げる。
『いきなり2倍になってはあなた達も些か混乱するかもしれないけれど、頑張ってね。それでは死亡者の発表です。この時間の死亡者は―――あら?鳴海くんひとり?ダメねぇ、もっと頑張らなくちゃ。』 『では、また6時間後に。』
ブツリ。
言いたいことだけ言って、西園寺はスピーカーのスイッチを乱暴に切った。
「おや、監督荒れてます?」
少年達が危険にさらされている、同時刻。 「…高橋さん、冗談はよしてくださる?」 ふふ、と笑みを浮かべて、西園寺は言う。 「いやいや、これは失敬。美人は怒らせると怖いですからね。ま、怒っていても貴女は美しいですが。」 げへへ、と品のない笑いを醸し出して、高橋は笑う。 「…ところで、高橋さん。副会長の貴方がこんな辺境の地まで一体何の御用です?」 高橋の向かいのソファに腰を下ろして、西園寺は言う。 「ああ、そのことなんですが。今回のゲームはほら、名前何でしたっけ、韓国の方からも参加している少年がいるでしょう。」 「ええ、李潤慶くんですね。」 「そう、その李くん。なかなか武術にも長けているし、手強いらしくてね〜。さすが韓国の秘蔵っ子。しかしですね、日本としては韓国の少年が優勝、なんてことは避けたいわけですわ。だって、ねえ、そうでしょう西園寺さん。ここで李くんが優勝でもしようものなら、韓国が図に乗るのは目に見えてますから。」 私は韓国は好かんのですよ。 鼻息も荒くそう言い放つ高橋を、西園寺はその綺麗な顔を少々歪めて見ていた。 「……仰ってることが良く分かりませんが。」 十分理解しているが、聞いてみる。
「…ですからね。罠にかけることはできませんでしょうか。禁止エリアに入ったと口実をつけて首輪を爆破させるとか。」
―――馬鹿らしい。
心の中では高橋を心底軽蔑しながらも、彼女はその美しい笑みを崩さない。 「残念ですけど、それはできませんわ。あくまでこれは有能な人材を発掘するためのプログラムです。実力主義の社会なのです。それに、そんな不審な死を韓国側が認めるとも思えませんわ。今の時点で戦争になったら、日本は確実に―――負けます。」 戦争になったら負ける。 そう断言する西園寺に、高橋は禿げ上がった頭をかく。 「確かに貴方のいう事も最もですな。いえ、これは私の独断で申し上げたことですから、お気になさらずに。しかし…。」 相当李が優勝するのが嫌らしい。 「ご心配なさらなくても結構ですわ。日本の少年達だってなかなかのものですよ。ほらこの―――日生くん。彼はもうひとりで6人も殺しています。逆に李くんはひとりだけ。高橋さんがお気に病むほど日本は劣っていませんし、韓国がずば抜けて有能と言うわけでもありません。」 極上の笑顔を添えてそんな言葉を進呈すれば、高橋もやっと納得して頷いた。 「確かにそうですな。ひとりで先走って申し訳ない。ここはひとつ、この日生くんに期待することに致しましょう。…いや〜、しかし美人の笑顔というのは迫力がございますな。」 がはは。 また品のない笑い声を上げて、高橋はひとりで楽しそうだ。 そして、迫力の笑顔で一言。
「お褒めの言葉として受け取っておきますわ。」
廃校の本部は、妙に明るい雰囲気に包まれていた。
《残り ― 17人》
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