恋人達の夏〜被害者編〜

 
 

とある昼下がり。

マーガスはシェスターに呼ばれカフェに呼び出され、延々とシェスターの愚痴を聞かされ続けていた。

 

「確かに気持ちが分からないわけじゃないんだよ。
傍から見れば3秒で気付くようなシュナイダーの気持ちに気が付かないで1年以上かけてようやく恋人同士になれたんだからシュナイダーが浮かれるのも分かるよ。
浮かれておれのことなんかみえないかもしれない。
でも、あそこまでベタつかなくでも良いだろう?それともあれでもおさえてるつもり?
もしそうだとしたらヤマトナデシコってのはどこに消えたの?
ああ、まだミートパイ来ないの?」

一気に喋り水を飲む。

 

「ヤマトナデシコ…。」

あれは女の子のことをいうのではないだろうか…。

 

「そうだろ。マーガスもそう思うだろ。憧れてたんだよ、ヤマトナデシコってのにさ!それなのに。」

目の前に注文の品が置かれ、言葉を止め食べ始める。

 

「シェスター、ヤマトナデシコは女の子を言うんじゃないか?」

「気に留める箇所はそこなのか!違うだろう!」

「確かに…。」

 

「まあ、百歩譲って怖がっていた若林は良いよ。
最初に嫌がっていたのに連れて行ったから1ミクロンくらいの非はあるし恐怖から救ってくれた奴がヒーローのように思えて流されることもあるからさ。

でも、シュナイダーの奴はどうだよ!

あいつ、頼られてるのを良いことに誓いのキスまでして!
ああ、教会だから誓いのキスも当たり前なの?違うだろう。更にはなんで若林のシャツのボタン外そうとするの?
答えなくて良いよ、聞きたくないから。
確かにそのときの若林はちょっと可愛かったよ。
『シュナイダー?』なんて小首を傾げて目を真ん丸くして。
その目だって、少し前まで泣いてたから潤んで可愛さ倍増で誘われるものがあったけど。
シュナイダーに代わって欲しいなんて一瞬考えたりするくらいだったよ。
すいません、コーヒーお代わり。」

 

「要するに羨ましいと?」

「違う!シュナイダーだけ殴り蹴り飛ばして代わろうとは思ったけど問題はそこじゃない。」

 

何気に気に入ってるな、若林のこと。少々聞き疲れてきたマーガスは呆れ半分でそう思う。

 

「何が可笑しいんだよ!実行する前にシュナイダーの奴、さっさと若林抱き上げて逃げて行ったよ。敵前逃走なんて皇帝がすることなの?行き場所?そんなの聞くまで無いじゃない。ご想像の通りだろうね。」

コーヒーを啜る。

「災難だったな。」

「災難?」

ぎろりと睨まれる。

「災難だって!ここまでは災難のうちに入らないよ。」

 

ダン!

 

カップを強く乱暴に置く。
半分くらい残っていた中身がこぼれた。
店員がすっ飛んで来たがシェスターは言葉を続ける。

「その後のカルツのことを言うんだ、災難って言うのはね。あの保護者、目が覚めたら『ゲンさんは?』って娘の心配して。」

「娘って…。」

「若林だよ。そんなこといちいち言わせるなよ。
連れ去ったのはおれじゃないのに散々カルツに責められてマジで首絞められて、ガクガク揺さぶられて意識とびそうな中『二人はどこ行った!!』て叫ぶカルツの声が鼓膜破かんばかりで。
『ラブホにでも行ったんじゃないか』って言ったら『どこのだ?』だって。
そんなの知るわけ無いじゃない。千里眼じゃないんだよ。
あきらめれば良いのに二人追いかけてさ。まだ1人でやるんなら止めないよ。

な・ん・で、おれまでつき合わされなきゃいけないんだ!

一晩中町のラブホ探しまくったんだ。
途中で分かれて探そうと言って走って逃げよ
うとたら楊枝で繋ぎとめられたんだ。
こう、ズボンとシャツを壁に縫いとめられてさ。人間業じゃないだろ、それ!みたいな感じだろ。
そのうち『霊感があるっていうなら霊視でもしてゲンさん探せ!』とか無茶言ってくるし、反論しようものなら攻撃しますって感じで楊枝が光るんだ。
あれ木製じゃないのかよ!なんで光るんだ?
どんどん時間が過ぎていって朝日が目にまぶしいってカンジ?太陽が黄色ってのはああいうことを言うんだろうね。どうせならもっと色っぽい理由で黄色い太陽になって欲しかったけど。

その太陽が昇ってくる方角から居たんだよ、シュナイダーたちが!

あのときの感動というか安堵というか今まで感じたことの無い感情の高まり。
『これで開放される♪』って天使のラッパが聞こえたよ。パトラッシュが迎えに来たような感じだったね。
アイスコーヒー!」

 

周りが見えないくらいに興奮している友になんと言って言いか分からず言葉もかけられない。

しかし、心底自分でなくて良かったと思う。

これを教訓に色々とあの三人との付き合い方を考えようと誓うマーガスだった。

 

…End…

恋人達の夏へ

お礼コメンツ

 

いのぽんさまから頂きました、「恋人達の夏」後日談v
シェスターのマシンガントークにただただ唖然とし(そして少しの羨望と・笑)、呆れながらもしっかりと話を聞いてあげてるマーガスの男前っぷりに惚れました!
いい人だ…(笑)
そして相変わらずな父と娘とその恋人。
シュナイダーひとり勝ちのような気もしつつ、カルツの楊枝が何で出来ているのか気になって仕方がありませぬ!
ともかくも、シェスター災難でした…!
マーガスも愚痴聞くの、お疲れさま(笑)

いのぽんさん、楽しくテンポの良いお話をありがとうございました!