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恋人達の夏 |
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B級ホラーにでてくるような教会。 きしんだ音をたててようやく開け中に入ってみるとかなりの数の霊たち。 それでもせっかく来たのだし連中も取り憑くそぶりもないので奥の祭壇に近づいてみる。
「行かないほうが良い。早くここから出よう。」
若林が泣きながらシェスターの袖を引っ張る。 「泣くほど怖い?かなり気味悪い連中だけど泣くほどじゃ…。」 「勝手に涙が出てくるんだよ。一番奥にいる人がすごく悲しんで泣いてるから。」 「それって波長が合ってるってことだよね…。取り憑かれそう?」 そうシェスターが尋ねた時、バタン!!とドアが閉まった。 「セオリーな…。」 「風か?開けるのに苦労したのに…。」 「出よう!なあ、出よう。ここは嫌だから。なあ、出よう!!」 カルツの言葉を遮って泣きじゃくりしがみついてくる若林。
「そ、そうだね。出よう。カルツ、シュナイダー、帰ろう。」
明確な殺意を感じ引き攣りつつ若林をシュナイダーに押し付ける。 カルツが力いっぱいドアを蹴っているのに見た目は壊れそうなドアなのにビクともしない。 正直言えば自分は大丈夫だと思う、取り憑かれることも無い。 問題は若林だ。 この部屋に入ったときから泣き出し、今は厭々と何かを拒んで必死で自我を保っている状態だ。
「さっさと開けろ。」
偉そうにカルツに言いながらも若林の肩を抱き涙をぬぐってやっているシュナイダー。 「簡単に言ってくれるな!見た目以上に頑丈なドアで。っこの!」 言われたカルツは不満をぶつけるように思いっきり蹴り上げる。
「どけ。」
そう言ったが早いか、どこからか出したボールでファイヤーショットを放つ。 そんなものでどうなるものでも…。
破壊音を立ててドアは開いた。
うそだろう、おい!しかもあれだけいた悪霊ども全て祓っちゃったよ。こいつ何者…。 シェスターの視線もどこ吹く風。あくまでも皇帝が心配なのは若林だけ。逃げ遅れて壊したドアの破片が当たり倒れているカルツには気にも留めない。その潔さはいっそ気持ち良いくらいだ。
「ドア開いたからもう平気だ。さあ、外に出よう。」
若林を抱きかかえるかのようにして破壊したドアから出て行く。当然、倒れているカルツは無視、どころか踏みつけていく。 友達なくすぞ、お前。 心の中でシュナイダーへの苦情を言いながら倒れたカルツをまたいで外に出る。 そこでシェスターが見たものは。
「怖かったんだな。でももう大丈夫だからな。」 優しく頭を撫でて甘く囁くシュナイダー。 「ん。」 こくこくと頷きながらしっかりとシュナイダーに抱きついている若林。 シェスターは教会の中に戻ろうかと真剣に考えてしまった。 そんなシェスターを押し留めたのは再び集まりだした霊たちの気配。
「シュナイダー、お前すごいなあ。」 頼り切った目でシュナイダーを見つめる。 「そうか…?惚れ直したか。」 「…うん…。」 視線を逸らしうつむきながらもうなづく。 この間、抱き合ったままである。 目の前でいちゃつく二人に蹴りをいれてからこの場を離れようと決意したシェスターをとがめることは出来ない。 その決意の間にも。 「こんなことがあったらオレを頼れ。良いな。」 「うん。そうする。」 絶対に蹴りいれる。 握りこぶしを作って決意を固めたシェスターは二人に向かって歩き出した。 シェスターがたどり着く前に。
「約束だ。何があってもお前を守るからお前はオレに頼れ。」
「うん。」
抱き合い見つめあいながら言葉を続けていく。 「それじゃ、誓いの…。」 シュナイダーが若林にキスをした。
誓いかよ、約束ちゃうんかい!! 目の前でキスまでされてシェスターは泣きたくなった。
泣いてる場合じゃない。悪霊どもが!シェスターが気を取り直すと…。 集まりつつあった霊は消えていた。 「…愛って偉大…。」 呆然とつぶやいてしまう。 「あ、シュナイダー。オレだってお前助けたいんだからお前もオレに頼れよ。」 「そうさせてもらう。」 依然として恋人達の会話は続くのだった。
…End… |
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お礼コメンツ |
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ツボ〜…!! いのぽんさん、本当にありがとうございましたvv |
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