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28:聡明な友人 |
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「また3人揃ってレギュラーだな!」
明るい声に似つかわしい笑顔を浮かべて、若菜は親友2人に振り返った。
「おう。」
短く素っ気無い返事をするのは、真田。
「当然でしょ。」
不敵な笑みを浮かべて答えるのは、郭。
「んじゃま、この後はお祝い会と洒落込みますか!いつものマックで良いよな。」 てきぱきと帰り支度を整えながら提案する若菜に、2人もこくりと頷いた。
「さ、行くか。」
これからも、ずっと先も。
『また3人揃ってレギュラーだな!』
「…と、……うと。」
静かな風景に酷く馴染んだ、落ち着いた声。
「結人。」
「……。」
ぼんやりと目を開けた若菜は、目の前に広がるくすんだ茶色と緑に次第に焦点を合わせる。
「……英士?」 「他の誰に見えると言うの?」
辛辣な物言いは相変わらず。 でも、それは。 ほんの一瞬。
「…無事、だったんだな。英士。」 若菜は安心したように笑いながら、背中に刺さった矢をゆっくりと抜き始める。 「結人こそ、そんなに矢を突き立てて倒れているものだから、死んでるのかと思ったよ。」 全部の矢を抜き終わって、ふぅと溜息をついた若菜に郭は興味深げに聞く。
「“これ”のおかげで、無傷で済んだけどな。」
そう言った若菜のシャツの下から出てきたのは、防弾チョッキ。 「本当に助かった…。」 もうあんな恐怖ご免だと、渋い顔で若菜は呟く。 そう言えば。 郭はここにいるけれど、真田の姿が見つからない。
「英士、一馬とは会ってないのか?」
その言葉に郭は首を動かした。
「会ったよ?」
だから何?
どこか上機嫌の郭に、若菜は絶句する。
「どうして、一緒に来なかったんだ?」
疑問に思ったから素直に尋ねる。 まさか英士が。 一馬に危害を加えるなんて、ある訳がない。
「…遠回りは嫌いだから、素直に言うけど。」
一呼吸。
「足手纏いだったんだ。」
鬱陶しげに呟いて、郭は若菜の反応を見守る。 果たして若菜は、表情を崩して―――笑った。
「…一馬、やっぱり怯えてたんだ?」
その様子が目に浮かぶ、と若菜は朗らかな笑い声を立てる。
「どうして、そう思う?」
まだ、分からない。
「だって英士、誰か殺しちゃったんじゃないの?一馬と一緒にいた奴。それも一馬の目の前で。」
鈍い光が若菜の眼光に光っているのを、郭は注意深く観察していた。
「だから、怯えて腰抜かしたんじゃん?」 「それじゃあ、連れて来れないだろ。英士はどうも乗ってるみたいだし?」
「……。」
どうやら、郭の罠にはまらなかったらしい。
「よくそこまで分かったね?」
「ああ、だって、英士気付いてないかもしれないけど。」 「血の匂いがするぜ?」 「英士が一馬を殺すわけないって、そこは信じてるんだ。」 「てことは、答えはひとつじゃん?」
にっかと歯を見せて笑った若菜に、郭は心底おかしそうに笑った。
「本当にさすがとしか言いようがないね。さっきまで恐怖で落ち込んでいたくせに。」
郭の皮肉に、若菜はほっとけ、と不貞腐れる。 「あんな奴に感謝なんてもったいない。しなくて良いよ。」 郭の言葉には杉原に対する嫌悪があからさまに現れていて、若菜はおかしくなった。
「で、どうする?」 一頻り和んだ後、若菜は郭に尋ねる。 「俺はひとりで行くよ。いくら結人でも、やっぱり足手纏いだと思う。」 ごめんね、と思ってもいない謝罪を口にする親友に、若菜は溜息をつく。 「…英士はさ、やっぱり潤を探してんの?」 ぽつんと落とした言葉は、どうやら郭の図星をついたようだった。 「それじゃ、俺は足手纏いだな。戦闘技術、高くねーもん。ゲームだったら負けない自信あんだけどさ。」 聡明な友人とは、かくもありがたいものなのか。 郭は感心したように頷く。 「…結人は頭が良くて助かるよ。」 本気で呟けば。 「お前が言うと唯の嫌味だってこと、忘れるなよ。」 皮肉が返ってきた。
「…それじゃ、俺は行くよ。一馬に会ったらあの時は驚かせて悪かったって言っておいて。」 ぱんぱんとズボンに付いた泥を払いながら立ち上がってそう言った郭に、若菜はべ、と舌を出す。 「そんなの自分で言いな。俺はヤダよ、一馬がまたヘタレるもん。」 冗談と本気が混ざった物言いに、清々しささえ覚える。
「結人も、頑張って。」
「俺は乗らないって。武器ないし。それに、死ぬのヤだけど殺すのもヤ。」
「…相変わらず我侭だね。」
「英士ほどじゃないって思ってるけど?」
「素敵な皮肉をありがとう。…じゃ。」
「あ、待った。英士お前誰殺したんだ?そう言えば聞いてなかったよな?」
「……水野。」
「……お前らしい。ていうか水野と一馬が一緒に行動していたって事実の方が驚きなんだけど。」
「ヘタレ同士で気があったんじゃないの?」
「毒舌絶好調ってか。」
「結人ほどでもないかもね?……結人は、誰か探してるの?」
「一馬。」
「…と?」
「ふはは、やっぱり英士には隠し事できねぇか。……風祭。」
「どうして一馬も結人も風祭が好きなんだろうね。不思議でならないけど。」
「とか言って、英士だって気に入ってるじゃんか。俺の目は節穴じゃないぜ〜。」
「さあ、どうだろうね。」
草を掻き分けて闇に消えていく郭の後ろ姿を見ながら、若菜はふっと口元を歪める。 途中で天城の遺体に出会う。 けれど、初見の時よりも衝撃は少なかった。
(慣れれば、こんなもん、とか思えるのかな?)
うえ、それも嫌だなァ。 我侭な感想を抱いて、若菜は進む。
行こう。 探し人を見つけに。
目に映る景色は暗闇だけど、若菜の心は何故か晴々としていた。
《残り ― 12人》
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