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+ Eifersucht + act:5 K-Side【本音偽装】 |
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――― こんな奴、知らない。 |
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俺の知っている若林源三と言う男は、いつも毅然としている。 だから。
―――こんな、怯えた表情を曝け出す若林なんか、俺は知らない。
胸倉を掴む右手は、力が入りっ放しで血管が浮き上がってきている。 俺は黙り込む。 若林が何か言うのを、待っている訳ではない。 答えなど、期待してはいけない。 言葉を返されることは、俺たちの関係が完全に崩壊することを意味する。
結局。
沈黙を破って、終焉を引き寄せたのは、俺だった。
「……お前なんか、好きじゃない。」
ポツリ、と吐き捨てたのは、そんな嘘。 ―――ああ、ついでに若林の表情まで揺れてしまっている。
「お前なんかを、愛しいと思うはずがない。」
偽りは口にする度、傷を抉る。
「お前なんかに、触れたいと思うはずがない。」
耐えるように右手に力を込めた。
「お前なんかと、共に居たいと思うはずがない。」
語尾が震えて、不自然な発音になる。
「お前なんかの、笑顔が見たいなどと思うはずがない。」
息を吸った瞬間、喉が音を立てた。
「抱きたいなどと―――思って良いはずがない…ッ…!」
言葉を外に出そうとすると、裂けそうなほど喉が痛む。
つらい。
思わず泣きそうになって、若林の肩に顔を埋める。
「……分かんね……。」
俺の考えを見透かしたかのようなタイミングで、若林がポツリと呟く。
「好きとか、嫌いとか。そーゆーの、良く分かんねぇ。」
さっきまで貝のように口を閉ざしていたのに、突然、ゆっくりではあるが話し出す若林。 ……ということは、これは若林の本音。 耳を澄ます。
「抱くとか、抱かれるとかってのも分かんね。分かるけど分かんねぇ。お前のこと、尊敬してるし、大好きだけど、この感情をなんて表して良いのかさっぱり分かんねぇんだ。」
とりあえず、軽蔑されているわけではないらしい。
なぁ、若林。
お前は今、何を考えている―――?
終わってもいい。
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