約束

 
 

恋人として付き合い始めてすぐの頃、妹に恋人として紹介したいと若林に告げたら真っ赤な顔をして反対された。
説得はしたのだが、半泣きで子供のように大きく首を横に振り続ける彼の可愛さに負けてそのときは退いた。

自分の誕生日の時にはメールが1通。
例えそのメールが一言だろうと1日の終わりに近い時間に送られてこようとも間違いなく若林がオレを祝ってくれている言葉なのだから保存する。
そのときの操作する指には細心の注意を払い愛を込めてボタンを押した。

それなのに妹マリーの誕生日は…。

家に花が送られてきた。
それには手書きのメッセージカードが付いていた。
さらに電話があった。
マリーが1時間近く電話していた。
母親と父親で30分近く話していた。
自分は3分だった…。

プレゼントも届いた。
マリーの喜びは兄として見ていて微笑ましいものであったが、恋人としては複雑極まりなかった。

 

この違いは何だー!!

 

オレのときはメールでたった一文のみだったんだ。それなのにマリーの時は花にプレゼントに電話。
いくらなんでも違いすぎだろう。これではオレとマリーどっちが恋人だか分からないではないか。
二人は仲が良い。
ドイツに来たばかりの若林にマリーが絵本を読んであげたこともあったし、今でも一緒に散歩をしたりと非常に仲が良い。

マリーは家庭環境もあって<おしゃま>だ。
サッカー以外では子供っぽい若林との会話はどちらが年上か分からないときもある。

更に若林はマリーのお気に入りである。
カルツ達は<お兄ちゃんのお友達>と思っているが若林は<お兄ちゃんと自分のお友達>と思っているらしい。
サッカーの話をしているときは会話に加わることはないがそれ以外の会話には参加してくる。
これは明らかにカルツ達に対する態度とは違う。

若林がいくら子供っぽいとはいえマリーの同級生の男の子より背も高ければ力もある。

つまり、<子供みたいで可愛くってでも大人で格好良い素敵な人>がマリーの若林評価なのだ。

若林にしても可愛いマリーに好かれて悪い気はしないだろうし、彼は悪意に敏感で攻撃的で好意には素直で一度受け入れた相手には甘い。
もちろん本気で二人が怪しいとは思っていないが、今日1日であからさまな違いを見せられると…。

 

 

次の日、マリーに恋人として紹介したいと告げたら以前と同じく真っ赤な顔で半泣きで首を大きく横に振り続けていた。
彼の可愛さは以前よりも上がっているが、オレも退く事はできない。更に説得を続ける。

そうしてようやく貰った返事は。

「マリーちゃんはまだ子供だから今すぐじゃなくて、マリーちゃんが14歳になるまで待ってくれ。」

子供と言うがお前との会話はどちらが年上が分からないこともあるんだが…。
そんなことも思ったが口にせず素直に14歳と言う年齢が出てきたことを問うと俺達が付き合い始めた年齢で…。

「…その…恋・というか…愛というか…そういう…のが分かって…、オレが…お前のこと、本気だって…。その…。」

どんどん声は小さくなっていったが、はっきりと聞こえた。

「あと×年後か…。気が変わるって事も…。」

たとえ若林が別れたいと言ってもオレは認める気もないのだがその間に別れるかもしれない。
不安にまぎれて口に上った言葉にも。

「女の子って<おませさん>が多いからちょっと早くなるかもしれないけど、とりあえず14歳。」

欠片も別れることは考えていない若林。

 

参った…!

 

つまらない嫉妬していた自分が恥ずかしい。
いつの時代も恋する男は馬鹿だが、自分は本当に大馬鹿だ。
照れと嬉しさとが混ざって笑いがこぼれた。

「何笑ってんだよ。兎に角、×年後だからな。」

「ああ、約束だ。」

笑顔の恋人に手をつかまれた。

「約束な。」

小指と小指を絡ませ歌いだした。

「指切り。日本式の約束。」

わけが分からず呆然と彼を見ているオレが可笑しかったのだろう。
悪戯が上手くいって子供のように笑ってるからこちらも悪戯を仕掛ける。

「それじゃ…。」

目をつぶる事もいつも若林がいう心の準備もさせない突然の触れるだけのキス。

「…ドイツ式?」

戸惑いながらも聞いてくる。

「いや、世界共通で恋人限定の約束の仕方だ。」

まじめな顔で言ってやる。

「そうなのか…?知らなかった…。」

呆然と呟く彼にまじめな顔を作るのが難しくなってきた。

「知ったところでお前からは?」

我慢して作った顔のまま促す。

「ええ!」

後ずさりしなくても良いだろう。

「約束するんだろう。」

「約束…だから、だぞ…!」

 

マリーに告げる×年後までに彼はこの小さな悪戯に気が付くのだろうか?

 

 

…END…

お礼コメンツ

 
いのぽんさんから頂きました、かんわいいシュナ源!!
いつもありがとうございます〜(涙)
相変わらず若林くん大ッ好きなシュナも微笑ましいし、ゲンゾー大好きvなマリーも可愛いし、若林くんと電話するシュナ両親も素敵だし、また騙されてる若林くんに至っては言葉にならず!
私、こっそりマリーがらみのシュナ源好きなんですよ〜。
絡みって言ってもどろどろした三角関係んじゃなくて、マリーが若林くんをお兄さんのように慕ってる、それみてシュナが複雑、っていう関係がね!大好きなんス!
家族ぐるみが好き〜!(コレは海城木静にも繋がるな)
ホント、良いもの見せて頂きました…!(目頭を抑える)

いのぽんさーん!ありがとうございます〜!!