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賭け事 |
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「もう一勝負するか?」 にやりと笑みを浮かべて聞かれると持ち前の負けん気が顔を出し 「今度こそ!」 と勝負を受ける。
同情するくらいなら借金をチャラにして欲しい。そう期待を込めた視線を送れば「それはそれ。これはこれ。」笑顔で切り捨てられてしまった。
出来た借金を返すべく今現在シュナイダーと向き合っている若林である。 本当に向き合っている。詳しく言うとシュナイダーの膝の上に乗り向かい合っている。 いわゆる膝抱っこ状態。ちなみにシュナイダーの腕は若林の腰に回されており逃げることは出来ない。 その状態で
「はい、あ〜ん。」
多少引きつってはいるものの笑顔付きで親鳥のごとく雛(そんな可愛いものではない)シュナイダーに食べさせている。 食べさせているのは、食べやすく一口大になっていて彩りもきれい。 「どうだ?」 思わず聞いてしまうのは作り手として気になるからであってそして自分も同じものをこれから食べるからであって決して相手に気を使ってではない。 「美味い。お前、本当に料理上手。いつでも嫁に来い。」 腰に回ってた腕が後頭部に伸ばされ引き寄せられてキスをされる。 「あほ…。」 赤くなって文句一つ。 もっと言いたいところだが原因は自分。 借金(金ではないが)の内容は<練習の昼食は愛妻弁当作ってきてそれをチームメイト全員の前でシュナイダーに膝抱っこされながら二人仲良く食べる>である。最初は<弁当を作る>だったのが負けが込んでそうなってしまった。 ここドイツで弁当を作ることは稀だが料理はするのでそれを詰めるくらいはどうってことは無い。 さすがに人前は避けたい。 それでも残った<愛妻弁当><膝抱っこ><仲良く><食べさせる>はしなければならない。 どんどん食べさせ食べてラストのフルーツまでたどり着けた。
「はい、あ〜ん。」
カットしたりんごを出す。
「なんだ、この形?」 「ウサギ。」
シュナイダーは自分で言ったことだが、思っていた以上にハート満載な弁当を考えついたり可愛らしいカットをしたりと若林は意外とメルヘンな一面を持っているとカットりんごを見て思う。
「りんごはウサギじゃなきゃだめだろう。」 「こないだのパイは違ったが…。」 「アップルパイでウサギにしたってしょうがないだろうが…。」 「コンポートも違う。」 「あれだと皮がピンとしないから耳にならないだろう。」 「そうなのか…?」 「まったくこの料理音痴が…。」
呆れたように言われても事実なのでしょうがない。
「こんな形にされたのは初めてだぞ。」 「日本はそうするけどこっちはそうなのか?」 「日本人より不器用だからかもしれないな。」 「お前が言うな。お前の不器用さは日独の問題じゃなく人類としてどうかと思うぞ。」 「失敬な。」 「事実だろう。マジで不器用過ぎなんだって。」 「その分、奥さんが器用だから。」
数回目のキスをされる。
「…あほ…。」 「美味い。」 「だろ?こっちのほうが美味く感じるよな?」 「ああ。」
自分の意見を認められたのが嬉しくようやく普通の笑顔で応えた若林にシュナイダーも嬉しくなる。 嬉しいついでに調子に乗る。
「足りない。だから…。」 「ん?」
手の動きがあやしい。
「ちょ…待て。なんかお前…。」 「足りないから…。」 「…ん…。っはあ…待て、待て!」
さっきまでと違う深めのキスをされ慌てて距離をとろうともがく。
「サウザーじゃあるまいし<待て>はないだろう。」 「犬でも待てる…んだ…っから。」 シュナイダーの膝の上から芝生に倒されつつも抵抗する。 「ま…ぁだ…練習あるんだ…からぁ…!あ、後で…。」 「そうだな、後で。」
若林を解放する。
「ちょっと、いや…!後ってのは…。」 「<男に二言はない>よな?」 「…っ!あ、当たり前だ…。」 「それじゃ後で。」
シュナイダーの綺麗でからかうような笑みを見ながら若林は思った。
<二度と賭け事はしない>と。
おまけ 「もう少しここにいろ、若林。」 「何でだよ。」 「酔った顔してるから。」 「飲んでねーぞ。」 「キスに酔った顔して可愛いから、ほかの奴に見せたくない。」 「…あ、あほ…。酔ってねーし、可愛くねー…。」 「その照れた顔はものすごく可愛いから独り占めしたい。」 「見んなよ、あほ…。」
…END… |
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| お礼コメンツ | |
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いのぽんさまから頂きました、可愛らしいSSvv いのぽんさま、素敵小説ありがとうございました〜vv |
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