夏の風物詩

 
 

明かりを消して蝋燭ともしてみんな輪になってすることといえば夏の風物詩<怪談>

 

「次で最後。若島津だね。」

 

つい今しがたまで身も毛もよだつ話をしていたとは思えないほど爽やかに次を促す三杉。

(お前の心臓は良いかもしれないけどこっちの心臓が持たねーよ。)

(怪談というよりそれは猟奇殺人だ。)

聞いていた人間の心の声だ。冷や汗をかいて聴いていた面々は三杉の恐ろしさを垣間見たような気がした。

 

「ああ、そうだな。オレはこのホテルに纏わる話をしよう。」

冷や汗を拭い、にやりと怪しげな笑みをうかべ話し始めた。
話自体はありがちな男女の悲恋話。愛する恋人と引き裂かれた女は悲しみにくれ彼と逢瀬をかさねたこのホテルで自殺した。
その後夜な夜な彼女の啜り泣きが聞こえるという。

「あ、ありがちな、なんのひねりもない話だな。」

「その割にはビビってるぜ、石崎。」

「うるせー。こいつの話し方がモロ怪談って感じでひいてるんだよ!」

「どちらにせよ、最後にしては物足りない話だよね。」

にこりと恐怖心がないような顔で笑う岬に石崎、滝は黙った。

 

「お前ら、話の腰を折るな。まだ続きが有るんだ。」

 

話よりも恐ろしいにらみを利かせ話を続けた。

彼女の死から数年が過ぎても彼女の嘆きは続いた。そして彼女の分かれた恋人が結婚し妻とそのホテルに訪れた。
当然、彼女は呪った。
愛しい愛しい、死してもまだ愛しかった彼。それゆえに許せなかった。かつては自分に向けていた愛の言葉を妻に囁く。
自分のものだった優しい笑顔が今は新妻のもの。
悲しみは憎しみに変わり、ただただ彼と結ばれなかったことを嘆き泣くだけだった彼女を化け物とした。

切々と語ってゆく若島津。正直翼は退屈だった。こんな情緒ある(?)話よりも先ほど三杉がしてくれたような話のほうが自分にはあっている。
こんなつまらない話だが、利用できるならする。

怖がって見せれば若林くんは振りほどかないだろう。

彼のそんな甘いところはつけこみ易い。にんまりと唇の端を上げ若林の手をとった。

 

ギクン。

 

急に手を握られた若林の体が跳ねる。
恐る恐る翼を見る若林に翼は自分の考えの間違いに気が付いた。

(こんな他愛もない話に怯えるなんて意外と怖がりなんだ…。)

他愛もないというが結構若島津の話は上手くかなりの参加者は怯えているのだが、そんなことは彼には関係なかった。

(うわ〜、目がウルウルしてる〜。アイ○ルの犬より可愛い。)

 

「大丈夫だよ。」

 

優しく若林の耳元で囁くと繋いだままだった手に力が入った。

 

(くぅ〜、良い!恋人に頼られるっていうのは堪らない。)←あくまでも翼の心の声で誰からも突っ込みは入らないため筆者が突っ込ませて貰おう。いつからお前と若林は恋人になったんだ!

(うるさいよ、地底の声)

普通、天の声なんじゃ…。

(君みたいなのだったら地底の声でももったいないくらいだよ。)

翼、手前いつか泣かす。

(オレは啼かすほうが良いの!さらにラブラブで甘甘が希望だね。)

ふん、そんな日は私が書いてる限りそう容易くは来ないんだからな〜。

(自分の力量のなさをキャラに押し付けないで欲しいね。はあ〜、ヤレヤレ。)

キィ〜、むかつく。いつか書く、絶対書たるわ。ラブラブな翼×源。

(そう。ニヤリ。)

はっ。しまった〜。つい…。いや、世間のニーズがないから…。

(書け!)

き、気が向いたら…。

(向け!)

さ、さあ。話を続けよう。

(ちっ。逃げやがった。)

 

そんなこんなしている間に若島津の話は佳境を迎えていた。

化け物と化した彼女は男を呪い殺し、新妻にもその手を伸ばそうとしていた。
おどろおどろしい雰囲気をまとわり付かせ話し続けていた若島津が一呼吸置いた。

その瞬間、甲高い女の叫び声が聞こえた。

「っ…!」

緊張漂う部屋。急にドアが開きそこに立つ髪の長い影。一同に恐怖が襲った。

(若林くん、オレに抱きついてきてくれても良いよ。)

若林はある意味冷静に暴走していた翼の手を離しすくっと立ち上がるとその影に近づき情け容赦なくグーで殴りつける。

「たち悪いぞ、お前ら。」

「痛い、酷いです〜。」

「最後を盛り上げようとしたんだろうがー!」

ずれたカツラをおさえながらピーピ泣く沢田に折角盛り上げたのに慌てることなく冷静に対処する若林に講義する若島津。

「どうなってるんですか…。」

呆然とつぶやいた来生はみんなの思いを代表していた。

 

「つまり、このホテルに纏わるっていうのは真っ赤な嘘で。」

 

「わざわざ、ヅラまで用意して。」

「人騒がせな…。」

「お前らも楽しんだから良いだろう。」

「それにしても、お茶目すぎだよ。」

「本当、ボクの心臓が持たないよ。」

 

(いや、それはないと思うぞ)

 

「とにかく、いくらこのホテルで失恋して自殺した女性が居たからってアレはやり過ぎだ。」

 

「へ?」

 

「本当にいるんですか?」

「さっきまで若島津の横で自分はそんなことしてないって抗議してたぞ。」

 

若林はさらりと言ってのける。

 

「ど、どんな人が…。」

怖いもの見たさ、知りたさで問いかけてみる。

「銀髪のショートカットの女性。振られて自殺したけど、相手を呪い殺すようなことしてないって勝手なこと言わないでって泣きながら抗議してた。」

「ほ、本当に…。」

「ああ。でてこられてオレも最初びっくりしたけどただ泣いてるだけだし、ほっといたら抗議を始めるし。なあ、翼?」

急にフラレても困る。それに翼にその女性は見えなかった。

「お前『大丈夫だ』って手握ってくれただろう。見えてからそうしたんじゃないのか?」

 

(まったく見えていませんでした。話に怖がってたんじゃなく本物の霊に怯えてたんだ…。)

 

「あははは。まあ、何事もなく良かった、良かった。さあ、解散しよう。」

「そうだな。寝よう、寝よう。」

「それじゃ、三杉。」

「お休み、三杉君。」

とりあえず、全員この場を去ることに決めたらしい。部屋の住人、三杉を残し戻ることにする。

「ちょ、ちょっと、ボクを生贄にする気?!」

さすがに気味が悪いこの部屋に一人残るのは気がひける。

「お前なら平気だって。」

無責任に笑う連中を抹消リストの上位に上げ、若林を捕まえる。

「平気だって。彼女もただ泣くだけだしお前は見えないし、聞こえない。問題ないだろう。」

 

あります。あり過ぎです。

 

「部屋変わってもいいけど、泣き声聞きながら寝るのはオレも嫌だし…。」

「お祓いとか出来ないのか?」

「石崎〜、無茶いうな。オレは見えて聞こえるだけだ。」

 

それもスゴイです。

 

「祓う力がないから…。ああ、そうか。」

ぽん。手を打つ。

「シュナイダー呼ぼう。あいつ、霊感ないのに祓えるんだ。」

「三杉くん、気にしないでここで寝て。行こう、若林くん。」

さっさと若林の背中を押し出て行く翼。

「良いのか?シュナイダーならファイヤーショットで祓えるぞ。」

 

どんな使い道だ、皇帝!

 

「良いの、良いの。大体女性にファイヤーショット放つなんてあんまりだよ。見えないし聞こえない。蚊よりマシじゃない。」

霊を蚊以下にする男、翼。彼は並みの男ではなかった。

 

 

「寝られるわけないじゃないか〜!」

 

 

三杉の叫びはむなしく響いていたが、彼はその3分後に熟睡してしまった。

翼と互角以上に渡り合った三杉淳。彼もまた並みの男ではなかった。

 

 

END

お礼コメンツ

 
いのぽんさまから頂きました〜!
全日本って仲良さそうでいいなァ…。
シマヅがおちゃめだ(笑)
ていうか!!霊感のある(そして霊と同調しやすい)SGGKすっごい萌えたんですけど…!!!
有り得ないくらいに萌えました。
更に言えば、ファイヤーショットで霊を祓える皇帝もめっちゃ萌えました…(萌え萌え言い過ぎ)
暴走してる翼も大好きですがvv(そしてラブラブな翼源楽しみにしてます/笑)
このお話ネタにイラスト描く権利を頂いたので、その内ウキウキと描かせて頂きたく!

いのぽんさま、楽しいお話をありがとうございました〜v