「そろそろ行くぞ。」

ずっと花を見ている若林に何度声をかけただろう。そのたびに

「もう少しだけ、なあ?」

とにっこりと笑いながら言われてしまえば

「少しだけだぞ。」

と許してしまう自分はいつまで経っても恋する男の代表のようだと思う。それに比べて恋人である(はずの)若林はいつもと変わらない。
こっちは、久し振りに二人っきりで過ごすことができるのであれやこれやと色々と考えていたと(妄想という)いうのに。

 

「もういいだろう?」

さすがに限界だ。花を見ている若林を見ているのも限界だ。手を伸ばせば届くのに何もできないのはまだまだ若い男にはつらすぎる。

「ああ。」

そう言いながらも、花に目をやったままだ。

「若林。」

「分かったよ。今日の夜は雨だから明日には散っちゃうんだろうな。」

「・・・もうすこしだけだぞ。」

自分はとことん甘い男だと思う。

 

「お前がそんな花が好きだったなんて知らなかった。」

「日本人はみんな桜が好きだ。」

目線は桜にやったままだ。非常に面白くない。たとえ、桜を見ている若林がきれいだと思っていてもだ。
<日本人は〜>なんて言われたらもう桜に若林を取られているのが許せなくなる。

 

バキ。

 

「若林。家で見ろ。」

たった今へし折った桜の枝を差し出す。

「お前。」

「もっと太い枝が良いか?」

「そうじゃなくって・・・。お前って馬鹿・・・。」

あきれ返った表情で若林が呟く。

「花ばかり見ているお前が悪い。帰るぞ。」

そこまで言われても若林は

「桜嫌いか?」

と見当はずれなことを言ってくれる。そんなニブイ恋人に言葉を惜しんではならないというのは彼を口説き落としたときに十分に理解している。

「桜よりもお前が好きだってことだ。」

素直に告げる。

「本当にお前って馬鹿・・・。」

「今更だろう。」

「そうだな・・・。ああ、もう!今日はオレも馬鹿してやる!」

そう言うと俺の手を乱暴につかんだ。

「帰ろうぜ、シュナイダー。」

真っ赤になって俺を引っ張っていく。どうやら若林にしては珍しく手をつないでくれるらしい。

「帰ろう、源三。この花より鮮やかな華を咲かせてやるから。」

 

そんな自分の言葉の意味を若林が身をもって理解するのは翌日の朝のこと。

 

 …End…

お礼コメンツ

 
いのぽんさんから頂きました桜の小説、シュナイダー幸せ風味ですvv
題名勝手につけさせていただいてしまいましたが…よ、良かったのかな(汗)
ああ、日本人は桜が好きさ!と私も激しく若林くんに同調。
シュナだってきっと「綺麗だなァ」位には思っているのでしょうけど、若林くんの意識が全部桜に持っていかれるのはやはり面白くないらしく。
桜の木の下を手を繋いで歩く2人はさぞかし可愛らしいことでしょうね〜vv
素敵な小説をありがとうございましたvv