タブー

 

  

時として人は。

禁句と分かっていてもその言葉を口にせずにはいられない事がある。

  

  

「ん。」

しばらくぶりの逢瀬。

久しぶりの抱擁。

2週間ぶりの――――――キス。

変わってない様子に心のどこかで安堵している自分を嘲笑う。

  

クリスマスも終わった12月下旬。
お互いに仕事が一段落したことで、ゆっくりと会う時間がとれた。
部屋に入ってきた城之内は照れ臭そうに「へへ」と笑う。
2週間というブランクがあったせいだろうか。
以前見たときよりも、その笑顔は数段輝いていた。
愛しさが募っても、仕方がないと思う。

そうしてそれが自然であるかのように抱き合って、キスをした。

いままで何度も口付けを交わしてきた。
勿論、それ以上のことも。
いつも城之内はほんのり頬を染め、潤んだ瞳を瞬かせて俺を煽る。
初めての時と同じように。
いつまで経ってもコイツはキスの仕方すら覚えられていない。
犬に学習能力を期待する方が無駄のようだ…。

「ふ……。」

散々弄んでいた舌を離すと、名残惜しげな声が漏れる。
本人はそれには気付いていないようだが。
お互いの口元から引く銀糸をそっと拭えば、急に現実に引き戻されたかのように城之内の顔が真っ赤に染まった。
今更、と思わなくもないのだが、その仕草の可愛らしさについ、口元が緩んでしまう。
自分の痴態を嗤われたと思ったのだろう。
城之内は一層眦を濃い朱に染める。
―――ダメだ、あまりに可愛すぎる。
久しぶりと言うこともあって、俺の記憶中枢は壊れていたに違いない。
故に、ヤツにとっての禁句を思い切り口にしてしまっていた。 

  

「可愛いぞ。」

  

しまった、と思ったときにはもう遅かった。

  

―――――――――

  

「嫌いだ!お前なんて!大ッ嫌いだ――――――ッ!!!」

何でコイツはオレが言われてイヤなことバッカリ言うんだ!?
負け犬とか凡骨とか!!
多分心の中ではもっと沢山オレのことを貶めるようなあだ名で呼んでいるに違いない!(大正解★)
言うに事欠いて「可愛い」だぁ!?
……泣くぞ!

「何でお前ってそうなんだよ!オレがそう言われること嫌いだって知ってンだろー!?」
ジタバタとヤツの腕から逃れようとするが、コイツ細いくせに力だけはありあまってんのな!
喧嘩慣れしてるはずのオレが歯がたたねぇってどういうこったよ!

「お前がそう形容されることを嫌悪しているのは知っている。知っているが事実なのだから仕方ないだろう。」
ぬ、開き直りやがったなこの野郎。
「それってオレの事バカにしてるって思わねぇ?」
拗ね気味に上目遣いと言うものに挑戦してみる。
この間遊戯にやったら効果抜群だったんだけど。
喧嘩してるときとか、コレをすると必ず相手から謝ってくるのだ。
何故かは知らねぇけど…。
しかし果敢なオレのチャレンジも、海馬に掛かればどうって事無かったようで普通に「フン」と返されてしまった。
くそぅ…。

「機嫌を直せ。」

ちゅ。

海馬がいつもよりも優しく髪にキスを落としてくる。
くすぐったくて、何か気持ち良いんだけど。
あーもう!全くムカツク野郎だぜ!
オレの扱い方、完璧に分かってやがる…。

まー久しぶりに会ったんだしな。
ここはオレが折れるか。

「やっぱりお前なんか嫌いだ。」

そう言ってから、瞳を眇める海馬にキスの一つでも送ってやれば、はい、仲直り。

とりあえずもう可愛いって言うなよ!? 

  

END・


「可愛い奴だ」
「あ!また言いやがったなこんにゃろ!」

作者コメンツ

 

「タブー」じゃなくて「ラブー」じゃないのかコレと言うほど甘い。
「可愛い」って男の子は言われてもうれしかないような。特に城之内君は男臭い子ですからね!
でも格好いいと言われるのも微妙ですな…。いや、社長には、と言うことです(笑)