―散策―

 

仕事も、バイトも。

両方とも暇が出来て。

近くの海辺へ、足を伸ばしてみることになった。

 

既に日が傾いている。

赤い赤い海を横目に。

ひたすら。

波打ち際を歩く。

  

さくり。さくり。

  

しばらくぶりに踏みしめる。

心許ない浜辺を。

スニーカーに砂が紛れ込んできそうな程、深く。

  

さ、さく…。

  

数歩後ろから聞こえる足音。

城之内とは違い、極力砂浜に足を付けないように歩いている。

かといって、急いでいるのかと言えば、そうでもなく。

  

時々。

  

城之内が思い付いたように振り返る。

振り返って。

相手が“其処に居る”ことを確認してはまた、正面を向いて歩き出した。

それをしばらく繰り返す。

  

  

―――何度目だったか。

  

くすり、と。

海馬が忍び笑った。

風に弄ばれる深い茶色の髪を、抑えようともせず。

城之内の動作に、どことなく飼い主を振り返る「犬」を思い出して。

  

愛しげに。

瞳を細める。

  

  

背後に感じる微かな微笑。

それに城之内は振り返った。

  

今度は。

身体を反転させて、正面で海馬を捕らえる。

  

海馬はまだその端正な顔に、僅かな笑みを浮かべていた。

  

「ニヤニヤしてんじゃねーよ。」

ぷっくりと頬を膨らませて。

悪態を付けば。

  

「貴様の膨れっ面よりはマシだろう?」

いつものように毒舌が返ってくる。

  

それでも。

その響きは囁きのように優しい。

  

ふん、と。

城之内はまた歩き始める。

その後を。

ゆっくりと、海馬も追っていった。

  

  

ざざん……

ざざーん……

 

  

寄せては帰す、白い波。

夕日に染まって、ほんのり赤くなってしまっていたけれど。

  

  

嬉しそうに笑みを浮かべている。

  

今の城之内の頬のように。

  

  

END・

作者コメンツ

サムイ。