ラブ・ワード  
 

 

すきだ。

 

何の脈絡もなく突然、その3文字はオレの脳内を独占する。
相手がいるいないに関わらず、だ。
そしていつまでも居座り続ける。
そのたびに、「ああ、オレはアイツがすきなんだ。」と否応無しに再認識させられる。
目を閉じれば浮かぶ、憎たらしい顔。
そんな顔も愛しいだなんて、本当にどうかしている。

 

一緒にいられる時間は少ない。限られていると言っていい。
その少ない時間の中でオレたちがするのは、互いを罵り合うこと。
本気じゃない、ほんの言葉遊びだ。
あっちがそれを望むから、応えてやる。

 

「…じゃ、俺もう行くわ。不味いコーヒーごちそうさん。」

「何だ忙しない。…コーヒーは少尉の趣味だ。本人に伝えておこう。」

 

ソーサーにカップを音をたてて置いて、ソファに掛けていた赤いコートを羽織る。
その間も男は動かない。

 

「次も長くなるよ。ったく、面倒なもんばっか押しつけやがって。」

「それだけ期待しているということだよ。頑張りたまえ。」

 

にこりと笑う男に、少年はけっと毒づく。
知っているのだ、彼が自分の自分達の為にどれだけ尽力しているかくらい。
だから、逆らわない。

それに。

 

「気を付けて、行っておいで。」

 

弟くんにもよろしくね、というやさしい声とともに、一番欲しかった言葉が追い掛けてくれるから。

 

「戻っておいで。待ってるから。」

背中で感じることしか出来ないが、ロイは今極上の笑顔を浮かべていることだろう。
弾む胸を押さえて、エドワードはひらひらと片手を振った。

 

「行ってきます。なるべく早く帰るようにするよ。」

 

ああ。

やっぱり。

 

「…俺、アンタのことすきだわ。」

 
 

 

  

END

作者コメンツ  
帰ってくる場所。ロックベル家、それに東方司令部。
いう程兄弟は寂しくなんてないよ、って話。
それとマスタングはやっぱり母親役だよなぁ…。