| 『愛してる。』 | |
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あの人の「愛してる」は、「おはよう」や「ご機嫌いかが?」と同じ意味なのよ。 「…って昨日寄った洋菓子店のおねーさんが言ってマシタ。…本当?」 「さあ?私は言われたことがないから答えかねるわね。」 それぞれ微妙に色合いの似ている、しかし同じではない金色の髪を風に弄ばせながら会話をしているのは、エドワードとリザ。
理由は簡単。 二人は『あること』で、ライバルの関係にあるからだ。
「へぇ!意外〜。中尉なら毎日のように言われてるかと思ったのに。ふーん、そう。」 「ご期待に添えなくて残念だわ。そういうエドワードくんは逢うたびに言われているわね。…母親みたいに。」
バチバチ。
まるで火花が飛び散る様が見て取れるようだ。
(勘弁してくださいよ…。)
涙目でファイル整理をしながら、ハボックは思った。 何故、自分はこんなところに居るのだろうと。 しかし、いくら嘆いたところで目の前の現実は変わらない。
「そういえば、少尉はある?アイツに『愛してる』って言われたこと。」
「それは私も気になる問題ね。…どうなの?ハボック少尉。」
にっこり。
二つ揃った綺麗な笑顔に対抗する術など、彼にはなく。 記憶を振り返ってみる。
『愛してるよ、ハボック少尉。』
あった。 恐ろしいことに、ごく最近、言われたことがあったのだ。
青褪めたハボックを見咎めて、エドワードがふぅん、と瞳を眇める。
「……あるんだ?」
少年期特有の鼻に掛かった様な可愛らしい声ではなく、ドスの利いた低い声に驚いて少年を見つめると、エドワードはにっこりともう1回笑った。 「や、言われたって言ってもあれは冗談っつーか何つーか…。」 あたふたと答える。
そう、あれは半ば強引に上司の仕事を手伝わされていた時。 やっと終わったと思えば既に時計の針は深夜0時を回り、残業にも程があるだろうと上司にたらたらと文句を言いたくなったハボックは、とりあえず出来た書類を不機嫌にドン、とデスクの上に置いた。 そして。
『問題ない。―――愛してるよ、ハボック少尉。』
例の発言だ。
「少尉も隅に置けないなー。…ブラックリストに載っとく?」 にこにこと爽やかな笑いを振り撒きながら、エドワードは恐ろしい言葉を連ねる。
「ふ、二人とも落ち着いてくださいよ!俺は何もしてないッスから!」 「ふふ、分かってるわよ。何をそんなに慌てているの?」 「ねぇ?少尉にそんな甲斐性がある訳ないのなんて分かりきってるっつーの。」 「……。」
がくり、と項垂れる大きな体。
恐らく今は自宅で惰眠を貪っているであろう上官を思って、自分ひとりが何故こんな目に、とハボックは泣きたくなった。
END |
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| 作者コメンツ | |
| エドvsアイ。そして何故かハボック。 想い人は言わずもがななんですが、やはり夢見すぎですか。 |
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