ライク・ラブ  
 

 

愛と言うものは。

どうやら一種類だけではないらしい。

 

「あったりめぇだろ、何だよ今更。」

不機嫌そうに言うのはエドワード・エルリック。
天才錬金術師と呼び声高い、若干15歳。
誉れ高い称号とは裏腹に、彼の容貌は少年そのもの―――というか、少々同年代の少年少女より一回りほど小さかった。
顔を顰めてしまったエドワードに、弟は首を傾げる。
傾げた拍子にガシャン、と金属音が響いた。
彼の容姿は可愛らしい声とは裏腹に、鎧そのもの。文字通り、全くの鎧だった。

「だってね、兄さん、愛情って言ったらやっぱり家族愛じゃないかなァとボク思うんだけど。」

「真っ先に家族が出てくる所は同感だが、それだけじゃダメだろ。恋人とか、友人とか、その他諸々への愛もなきゃ殺伐とした世界になっちまうだろうが。」

「うーん、そうだけど、それって愛かなァ。」

「…何。」

「愛情じゃなくて、友情とか。恋慕とか。」

「結局は愛情には代わりがないって思うけど?」

「うーん…。」

不毛な会話は続く。
すれた認識を持つ兄に、純情な弟は納得できかねるといった感じだ。
そして、そうだ、と何かを思いついて人差し指を立てる。

 

「母さんがボクたちに注いでくれた愛情と、大佐がボクたちに注いでくれる愛情は一緒じゃないかな?」

「あ・り・え・ね・え!」

「えーそれもまた違う愛なの?」

「つかそもそも大佐の押し付けがましいものを愛情と言い切る時点でお前おかしいぞ!」

「あんなに優しいのに。」

「計算計算!」

「ひどいなァ…ボク、審美眼は優れているつもりなんだけど。」

「お前をけなしてるんじゃないから安心しろ。あれはきたねぇ大人の仮面だって!アルも騙されんな!」

「おかしいなー。兄さんも同意してくれると思ったのに。大佐は本当にボクたちのこと心配して、気にかけてくれてるじゃない。」

「だーかーらー!」

「計算だって言うんでしょ?そうはとても思えないけど…。」

「お前はアイツの汚い部分なんて知らなくていい。」

ふん、と鼻息も荒いエドワードは、どこか自慢気。
あれ?と聡いアルフォンスは違和感を覚える。

 

「兄さんもしかして…大佐のこと、好き?なの?」

「ぶっ!」

「あーやっぱり。」

「何いきなり突拍子もないこと言い出してんだ、お前は。」

「だって、何だか自分のものを知られたくなくて隠そう隠そうと画策しているみたいに見えたから。」

「……。」

「…図星、だね。」

「……。」

「じゃあ、大佐が兄さんに向ける愛情と、兄さんが大佐に向ける愛情は同じ物?」

「!」

 

さり気ない弟の爆弾発言に兄はビックリしていいやら嘆いていいやら。
愛情は愛情でも、彼が自分にくれる愛情は果たして自分と同じ物なのかどうなのか。
答えに窮したエドワードは睨むようにアルフォンスを見据えて、それでも何とか声を紡いだ。

 

「多分、違う…。」

「え、それって」

「言うな。くそ、あのクソ大佐、俺のことなんててんで子供扱いで相手になんてしてくれねぇんだよ!」

「あはは、冗談だって思われてるんじゃない?」

「…アル、俺に何か恨みでも?」

「別に?」

 

可愛らしく首をかしげると、またガシャン。
その仕草が自分をかわした時の卑怯な大人と被って、エドワードはうめいた。
当たって砕けろ、玉砕上等で言った本音だったのに、相手は歯牙にもかけないどころかさらりと上面で滑らした。

『私も君が好きだよ、鋼の?』

声色には殊更親愛の情を込めて。母親のような柔らかさを含ませて。
牽制なのか、ただの嫌がらせなのか。
分かりかねたエドワードは、逃げるようにその場を去ってしまったのだが。

 

「大佐はすごく上手に生きているよね。でも不器用で。」

「そう…本音なんて、見せてくれる相手じゃねぇ。」

「愛情の使い分けも、心得ているんだろうなァ。」

「お前はまだそこに拘るか。」

はーと項垂れたエドワードに、鎧は可笑しそうに音を立てる。

 

「人のこころって難しいね、兄さん。」

 

 

END

作者コメンツ  
エド→ロイ+アル…なのか?(聞かない)
この兄弟って本当に仲良さそうでいいなァと思って、2人してマスタングを慕っていたら良いなァとか思って。
何気にアルがいい性格になってしまいましたが。本当になんだコリャ。
文章にするとアルを書きたくてしょうがないらしいです、はい。
題名は「好き・愛してる」でも、「愛のような」でも。どっちでも。大して意味はないので。