+ 拾い物 +
見間違えるはずもない。 赤い帽子。 ひょいと拾い上げて、被ってみた。
(うーん、ちょっと大きいかな?)
ツバを後ろから前へ回して、そんなことを思う。 跳ねた髪がうまく収まらないことを差し引いても、俺にはちょっと大きいようだ。 そう言えば、帽子の主人も風で飛ばないように時々押さえてたっけ。 今回は押さえる余裕もなく飛ばされちゃったのかな。
夕日が照らす河原にたたずんで、赤を目深に被る。 微かに薫ったのは、彼の香り。
何故か。
泣きたくなった。
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