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好敵手 |
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スポーツをしていれば、怪我をするなんて事は日常茶飯事で。 それが例え、全治2週間もの少し重い怪我だとしても、「いつものこと」で済ませられるはずで。 加害者はいつも仏頂面で燃えるシュートを叩き込んでくる、ゴールキーパーを人とも思っていないような奴で。 被害者もそんなシュートを止めてしまうような、少し人の基準から外れてしまっているような奴で。 同じチームでもライバル同士、練習とは言え熱が入って本気になってしまうなんてことは日常で。 そんな2人に引っ張られる形で、チームは成り立っていたから。
―――どちらも欠けた、この状況は、不自然以外の何者でもなかった。
今日のハンブルグの練習はどこか気が抜けている。 (あの2人がいないだけで、こんなになっちまうなんてなァ…。) グラウンド横の芝生に寝転がって、カルツは思う。
3日前。 いつものようにシュナイダーと若林が居残り練習をしていると、その様子を一旦家に帰り、普段着に着替えたカルツが見学にきた。 暗闇が空を覆い始めた時分。 しかし、その2人の表情はすぐに険しいものへと移行する。 若林が倒れたまま、起き上がってこない。 医師の診断は、左足首にヒビが入ったとの事。 それを聞いた瞬間、悲愴な表情を浮かべたのは怪我をした本人ではなく、させてしまったシュナイダー。 それから3日間。 シュナイダーはハンブルグのコートに現れていなかった。
(皇帝は今頃何してんのかねぇ。) 欠伸をしながら、晴れた空にのんびりと思うカルツなのだった。
そしてその皇帝は。 「ごめんね、付き合わせちゃって。お兄ちゃんには退屈だったでしょう。」 「いや、良い気分転換になる。もう買い残しはないのか?」 「うん、ありがとう。もう空も赤らんできたし、そろそろ帰ろ!」 目一杯可愛らしく笑って、マリーはシュナイダーの手を引いていく。
そんな幸せな兄妹を家の前で待っていたのは、不機嫌オーラを纏った異国人。
同年代の友人達よりも少し幼い顔を怒りで歪ませている。
「なぜ、練習に来ない。」
ぴし、と叱りつけるような声で用件を手短に言う。 「俺の勝手だろう。」 負けじと不機嫌に言ってやれば、若林の機嫌も目に見えて悪くなる。 「俺のせいなのか。」 吐き捨てた言葉には確信を込めて。 「俺のせいじゃなかったら何だって言うんだ!あれほどサッカーに入れ込んでいたお前が突然練習に3日も来なくなるなんてどう考えたっておかしいだろう!?俺に怪我させたから、俺が練習に復帰するまで自分もサッカーに関わらないつもりなんだろ!そんな気の使い方、間違ってるし、俺に対して失礼だ!!侮辱するにも程がある!!」 一気に捲くし立てると、若林は今度は目で語る。 「……お前のせい、というのは語弊がある。俺は、俺が許せないだけだ。」 「それが俺のせいなんだろうが。怪我なんて誰だってするだろ。お前は俺の保護者かなんかか?ライバルだと思っているのは俺だけなのか?大体この怪我だってお前のシュートを止め切れなかった俺のせいじゃないか!」 「それは違う。」 興奮して立ち上がった若林をまたベッドに座らせながら、シュナイダーは少し、困った顔をした。 「…本当に、お前のせいじゃないんだ。サッカーに私情を持ち込んだ、俺が悪い。そのとばっちりを若林が受けてしまった、それだけだ。」 頭を掻きながら、不貞腐れたような表情でそんなことを言い始める。 「…あの日の居残り練習、カルツが来ただろう。お前は、カルツが気になっていた。そうだな?」 確かに、練習を見ているだけで楽しいのかと思って、カルツに気を向けていたことは否定できない。 「いつもは2人きりで。お前の意識は全て俺に向けられているだろう。……そういうことだ。」 「そういうことって。」 「あぁ、お前はとことん鈍いんだったな。これで分かるはずがないか…。」 大袈裟にため息をつくシュナイダーに、馬鹿にされている気分になって(実際その通りなのだが)若林はムッと顔をしかめる。 「俺はあの時間、お前の身体だけでなく意識をも独り占めしているようで、いつも嬉しかったんだ。練習自体もいつもより気合が入ってしまう。なのに、あの日はお前の意識は俺よりもカルツに向かっていただろう。……それが、許せなかった。」 ただのヤキモチだ。 言い切って、自嘲する。 「お前がヤキモチなんか妬いていたせいで、俺はこんな怪我をしたって言いたいのか?」 「その通りだろうが。」 「まて、それは違うだろ。いくらお前がイライラしていたからって、そのシュートを止められなかったのはやっぱり俺自身の実力の問題で…。というかお前はいつも手加減していたとでも言うのか!?」 「何でそうなる……。」 どうも明後日の方へ行き始めた若林の思考に、ほとほと呆れてシュナイダーは額を押さえる。 「サッカーに私情を持ち込むことを俺が一番嫌っているという事は、お前も知っているだろう。他人にそれを求める本人が、私情をはさんでどうする?許せるわけがない。だから、これは俺自身の問題で、本気だろうが本気でなかろうが、そんなことは関係ない。」 「それは分かる。分かるが、だからと言ってサッカーを禁じるというのはおかしいだろう。もし俺に対して申し訳ないと言う気持ちが少しでもあるなら、もうそんなことはしない、と、誓いでも立てて練習に励んでくれた方がずっと良い。」 責めるような真っ直ぐな眼差しで、若林はシュナイダーを見上げる。 「そんな風に自分を責めて、練習を2週間も休むつもりなのか?この時期の2週間がどれだけ長いか、お前だって良く知っているくせに。」 「……だから、だろう。お前だって2週間ボールに触れることすらできないじゃないか。」 「俺の事は関係ないと言っている!―――それとも、」
「たかだか2週間のブランクで、俺がお前に追いつけなくなるとでも?」
挑むように睨む表情には怒りと、侮蔑と。
「見くびるなよ、シュナイダー。前を行くお前が時々振り返る程度なら分かる。変に甘いところがあるからな。けど、その足を止めてまで俺のことを待っているとなれば話は別だ。俺は、お前を越える。今じゃなくても、いつか絶対に。そん時は俺は後ろなんか振り返らないぜ。止まっているお前を置いて、さっさと上へ上がってやる!」 「若林…。」 「お前は自分を責めているつもりだろうが、それは俺を軽視しているだけだぜ。ひどく傲慢な態度だ。それを、俺が良しとするとでも?」 「……。」 「練習に出ろ、シュナイダー。キャプテンのお前が不在だと、チームの士気も下がる。」
言われてみれば、若林の言っていることは全て正論で、シュナイダーは目を逸らしてしまう。
「…ああ、そうだな。」
ふっと納得した様に笑って、シュナイダーは眩しそうに瞳を細める。 「明日から、参加しよう。当然、お前も見に来るんだろう?」 強気に笑って、シュナイダーは若林を見つめる。
左足の具合はどうだ、と聞けば、平気に決まってんだろ、との力強い言葉。
しかし、まぁ、良い所でお邪魔虫が入るというのはお約束で。
数分もしない内に、お茶を持ってきたマリーの可愛い拳が、シュナイダーの部屋の扉を叩いたことは言うまでもない。
…End… |
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| 言い訳後書き | |
| 闇5555Hits踏んでくださった吉野こうさまに捧げさせていただきますv リク内容は「練習中に怪我をした若林、させてしまったシュナイダー」とのことでしたが、クリアできていますでしょうか…ドキリ エロはいつも逃げてスミマセンと言った感じで(反省しろ) とっても素敵なシチュエーション頂いたのに、表現しきれない自分がホント、苛立たしい…! えー、あと怪我の描写、よく分からなかったので話半分と言った感じで読んでいただければ(苦笑) なんか結局いつものシュナ→源になっているきもしますが、一応、若林くんもシュナの事はそう言う意味で好きなので! こっそりマリーを描くのが楽しかったなんて事は内緒です…。 吉野さま、リクエストありがとうございましたvv |
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