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+ Eifersucht + act:8 SGGK【破顔一笑】 |
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こんなに簡単なことだったのか。 |
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一瞬で離れた熱を、失いたくないと思った。
「……いつから?」
じっと目を見つめて言葉足らずだろう質問を口にすれば、シュナイダーは質問の意味を性格に汲み取って、ふと目を伏せる。
「いつから、なんて忘れた。気付いたら目で追うほどになっていたからな。」
苦笑するシュナイダーは、どこか照れくさそうだった。 キスをされても嫌悪感はまるでなかった。
「…知らなかった。」
ぽつり、と呟いた言葉はシュナイダーの言葉を差すとともに、もう一つ、たった今自分で気がついた事実を示す。
「俺、馬鹿みたいに泣き虫なのな?」
伝う涙を誤魔化すために、へへ、と笑ってやる。
「俺も知らなかった。」 「…自分が、こんなに意気地がなかったなんて。」
一人で悩んでいたのが馬鹿みたいだ、と瞳を細める。
友情を壊したくなかったから? 自分を守りたかったから? 常識人でいたかったから?
どれも違うような気がする。
その内、気も変わる。 勘違いだったと分かる日が来る。
どこかでそれを望んでいたのかもしれない。 けれど。 そうなったらやっぱり俺は傷付くんだろう。
昔は俺の事好きだったくせに、なんて見当違いなヤキモチを妬いていたのかもしれない。
「若林。」
そう俺を呼ぶシュナイダーの瞳には、もう翳は見えない。
返事の代わりに、微笑う。
今度は抱擁が降って来た。
シュナイダーの肩に顔を埋める。 ユニフォームに涙が滲んだ感触がしたけれど、気にしないことにした。 コイツもきっと気にしないだろう。 俺の肩も、じわりと冷たくなったから。
皇帝の涙は、彼の今までの想いを雄弁に語ってくれた。 少し考えれば分かることなのに。 それにすら気付けないほど、俺も必死だったと言うことだろうか。
…正当化する言い訳を、今更考えても仕方ない。
「ゴメンな、シュナイダー。」
背中に手を回して、ゆっくり抱き締める。
「らしくないことをするな。…笑いが止まらなくなるだろう。」
そう言ってくすくすと笑う。
「らしくないのはどっちだよッ。皇帝ともあろうものが泣いてんじゃねぇよ、だらしねぇなァ。」
「!…泣いてなんかないぞ。」
「嘘付け。じゃあ、俺の肩が冷たいのは何でだ?」
「……黙れ。」
図星をつきまくったせいで、少し機嫌を損ねてしまったようだ。
しばらく肩を震わせて笑う。
涙が出るくらい。
「……いつまで笑っているんだ、若林。」
憮然とした声がしたかと思うと、顎に手を掛けられて強引なキスで口を塞がれる。
ただ、それだけのことなのに。
胸がいっぱいになって何も言えない。
けれど、多分。 シュナイダーが望んでいるのは、謝罪なんかじゃない。
もう一度キスしようとするシュナイダーの口を左手で塞いでから、少し顔をずらし、ヤツの耳元に自分の口をもっていく。
「―――すきだ。」
たったひとこと。 それはとてつもなく簡単で。 それなのに回り道をしてきた分、長い時間がかかってしまった。
けど、それでもいいと思う。 人にはそれぞれペースがあって、無理して急いてもしょうがないと思うから。 俺たちは俺たちなりに時を重ねれば良い。 距離に流されるほど、ふたりとも融通の聞くタイプじゃない。 離れて分かることだってあるだろう。
だから、良いと思う。
俺の言葉にシュナイダーは目を瞠ったあと、嬉しそうに笑った。 ずっと、その一言が聞きたかった。 涙がうっすらと浮かぶ濡れた瞳で、そんなことを言う。
許された気がして、俺も笑った。
今、この瞬間に笑い合える―――そのことだけで、きっと。
俺たちはやっていける。
END......
時間がかかったけれど、とりあえずハッピーエンド。 認めてしまえば簡単。 最後に。
2003/8/7 氷水眠子
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